ゲッター日記  @




  

 4月○日



 [ ムサシ ]


 わっほーい!!また今年もミチルさんと同じクラスだ!今年こそはミチルさんにオイラの気持ちを受け入れてもらうぞ!
 リョウも同じクラスなのはちょっと難点だけど。リョウはミチルさんの兄貴の達人さんと親しいからな。達人さんはサッカー部の先輩で、よくリョウ達のコーチに来ているから、ミチルさんも前からリョウとは仲がいい。う〜ん、強力なライバルだけど、負けるものか!
 柔道の特待生としてこの浅間学園に入学して以来、ミチルさんはオイラにとって憧れの的、永遠のマドンナなんだ!!



 [  リョウ ]

 
 いよいよ俺も3年生。高校生活最後の年だ。今年は何としても我がサッカー部を全国大会で活躍させたい。みんな真面目に頑張ってくれるけど、いまひとつ強さに欠ける。俺も努力しているけど、一人でボールを持ち続けるのは無理だ。俺のサポートができる奴が欲しい。
 ・・・・・・・・・・・アイツが入部してくれるといいんだが。アイツの運動神経は抜群だ。反射神経やスピードは信じられないほど凄い。チームプレーは無理があるかもしれないが、ゴールキーパーならできるんじゃないか?アイツの速さなら、相手チームに点を渡すことは無い。もちろん、」フォワードとして俺のパートナーになってくれるのが一番いいんだが。まずは無難にチームに慣れるところから。
 アイツは何でも出きるくせに何もしようとしない。それがひどく歯がゆい。



 [  ハヤト
 ]


 あいかわらず騒々しい奴とおせっかいな奴と同クラスだ。
 やれやれ。




 5月△日





 [  ムサシ ]
 

 来週からテストだ。(涙・・・・・)
 リョウが教えてくれるって言うけど、オイラ、勉強は苦手だよ〜〜〜〜〜。



 [  リョウ ]


 来週からテストのため、クラブ活動は休みだ。文武両道、俺たちは高校生としての勉学もおろそかにしてはいけない。
 ムサシはちょっと勉強が苦手だ。いつも教科の半分は赤点で、追試の定期券を持っている。やる気がないわけではないんだが・・・・・・・
 そうだ、明日は達人さんの家に行こう。達人さんのお父さんは世界でも有名な科学者で、達人さんも研究員として一緒に働いている。達人さんは忙しいだろうけど、ミチルさんがいる。ムサシはミチルさんが好きだからな。一緒に勉強しようといったら奮起するだろう。
 ハヤトも誘いたいけど、アイツはテスト前になるといつも帰宅届けを出している。アイツの家はたしか東京だったな。俺やムサシのように、家が九州や北海道というより格段に近いけど。わざわざテスト前に帰ることもないだろうに。よほど家の方が勉強がはかどるんだろうか。それほど成績にこだわっているようにも見えないんだけどな。なにしろ居眠りとエスケープの常習犯だ。
 自分のことはほとんど話さない奴だが、(俺たちのことも尋ねないが)確か、姉さんがいるはずだ。一度手紙を来たのを憶えている。やさしい文字で、
 「おふくろさんか?」
 と聞いたら、
 「姉貴だ。」
 と、そっけなかったが、機嫌よさそうだった。
 入学してからずっと同室なのに、(舎監の先生に言われたな。他の生徒だとハヤトと上手くいきそうにないから、ムサシとふたり、なんとか頼むって。)いまだに俺やムサシと一線を画している。お互い、切磋琢磨していくのにぴったりの相手だとも思うんだが。
 そうだ、今度、早乙女研究所に誘ってみよう。アイツは頭が良いから興味を持つかもしれない。なんでも研究所では、今、凄い研究をしているそうだから。



 [  ハヤト ]


  いつもはリョウもムサシもクラブ活動で忙しくてほとんど寮には居ない。2人とも、寮に戻って夕食や洗濯なんかしているうちにだいぶ遅くなるから、同室といってもそう顔を合わせる時間は多くない。だが、クラブが休みとなるとそうはいかない。一緒にテスト勉強しようとか言ってくる。
 リョウは優等生というか、おせっかいというか、何かというと「一緒にやらないか。」と声を掛けてくる。同室になってからずっとだ。つまり、もう2年以上ってことだ。俺はずっと断り続けているんだから、いい加減諦めるものじゃないか?あんまりしつこいので怒鳴ったりもするのに、あまり気にしていないようだ。『同室なんだからもっと親しくなるべきだ』なんていう責任感というか義務感というか。クソ真面目な奴は扱いづらいゼ。他のヤツラなら2度と声をかけてこないのに。
 最初の数ヶ月で、リョウの懲りない性格や正義感が「地」だってことがわかったから、それからはなるべくテスト前なんかは外泊することにした。夏休みはクラブがあるのでリョウやムサシもあまり帰省しないが、冬休みは正月があるので2人とも家に帰るから、俺が寮に残ることもある。リョウの家は九州だから、一度帰省するとけっこう長く居る。ムサシは北海道だ。あいつらにとって「家」とは心休まる居場所なんだろう。俺にとって「家」とは、そういう意味では姉さんだ。リョウ達は知らないが、俺の「帰宅」は東京の家ではない。この学園から少し離れたところにある別荘だ。俺が浅間学園を選んだ理由は寮があるからだ。もちろん、ある程度の偏差値も考慮した。バカばかりだと突っかかられてうっとうしい。
 俺と母さんと姉さんと、3人で過ごしたこの別荘。
 学園から、バイクでなら30分もかからない。(いい近道があるからな、崖とか谷間とか。)
 さっき、姉さんから電話があった。俺が入学してから一度も家に帰らないものだから、それを気にして、姉さんがわざわざこっちに来てくれる。大学生とはいえ、けっこう忙しいだろうに。ちゃんと彼氏もいるのにな。
 さっきの電話、久しぶりに美味しいものを作って一緒に食べようとのことだった。新鮮な材料を揃えて、昼過ぎには別荘に着くとのこと。
 だが。
 赤ピーマンのフラン・手長エビ添えとか、キャビアとトリュフのテリーヌとか、きのこのスープ・パイ仕様なんて、朝から下ごしらえするものばかりじゃないいか。下ごしらえに必要な材料のビン詰めや缶詰は、いつのまにかきちんと揃えてあるし。つまりは俺に準備しとけってことだ。おまけに焼きたてのパンがいい、イースト菌も強力粉も置いてあるからなんてな。まったく、人使いの荒いお人だぜ。




 6月X日 
 



 [  ムサシ ]


 ゲッターロボに乗った。何がなんだか解らないうちにかろうじて勝った。
 ミチルさんのためなら命なんて惜しくない。これからも戦うぞ!! 
 ・・・・・・・でも。爬虫類は苦手だ。どうしよう・・・・・・



 [  リョウ ]


 達人さんが亡くなった。
 メカザウルスとかいう敵のロボットに殺されたのだ。早乙女研究所で開発されていた平和のためのロボット、ゲッターロボ。武器を持たないため相手の攻撃に反撃できずに殺された。指をくわえて見ているしかないのかと歯軋りをしたが、なんともう一体、戦いのためのロボットがあったなんて。
 人類を守るためには力が必要だ。このロボットはパイロットが三人いる。おれはすぐさまムサシとハヤトを呼んだ。ハヤトはすぐには頷いてくれなかったが。でも、三人揃った。これからは、俺たちが地球を、人類を、ハチュウ人類から守るんだ!!



 [  ハヤト  ]


 このような敵、「種」が地球に存在していたとは思ってもみなかった。
 ハチュウ人類とメカザウルス。まるでSFの世界だ。
 リョウにゲッターへの搭乗を要請されたとき、俺は正直、迷った。「これはいったい、なんなのだろう。」と。「別に俺でなくてもいいだろうに。」と。
 俺の性格は、自分でも嫌になるほど懐疑的だ。リョウやムサシは、「必要なこと。」、そのひとつで戦いに身を投じたのに。理由なんかあとでいい。今、何を為すべきか、何が出来るかと。
 俺は正直言って、リョウ達よりも運動能力はあると思う。だが、根本的なところでは、俺はあの2人には勝てないな。これから先、おれはその何かを知るだろうか。




 6月XX日



 [  ムサシ ]


 ハヤトがオイラの「爬虫類恐怖症」を治してくれるという。おそるおそる付いていくと地下室に放り込まれた。何十匹ものヘビやカエルやトカゲがオイラの体に飛びついてきて、オイラは失神した・・・・・・・・。
 あとでミチルさんとリョウが助けにきてくれた。ミチルさんはハヤトを叱ってくれて、オイラには気にするなと慰めてくれた。なんて優しいひとなんだ。聖母のような人だ。
 でも、ハヤトの荒療治のおかげで、ヘビやトカゲやカエルがオイラに害を加えないことだけは理解できた。気持ち悪いだけだ。今度は目隠ししなくてもなんとか我慢できるだろう。少なくとも逃げ出したりさえしなければいいんだ。ベアー号の操縦桿だけは絶対離さないぞ。これだけでも進歩だよな。やっぱり、あとでハヤトに礼を言っとこう。



 [ リョウ ]


 俺が高所恐怖症だったなんて!普段の生活では空からの急降下なんてありえないから気がつかなかった。ジェットコースターは平気なんだ。どう違うんだ?自分で自分が情けない。とにかく、戦闘においてこれは命に関わることだ。自分だけではない、ハヤトやムサシ、ひいては地球人類すべての命に!
 ムサシは空を飛べないゲッター3と取り替えようかと言ってきたが、そんなカッコ悪いこと出来るもんか!
 ・・・・・・・・特訓だ・・・・・・・特訓だ--------!!
 ところで、ムサシは爬虫類恐怖症だったし、俺は高所恐怖症だ。ゲッターのパイロットとして万全とは言い難い。だがハヤトは?アイツは何が苦手なんだ?アイツに苦手は・・・・・・・ないのか?あいつの方が、リーダーにふさわしいのだろうか・・・・・



 [  ハヤト ]


 爬虫類人と戦わなくてはならないというのに、ムサシが「爬虫類恐怖症」だとはな。あいかわらずお笑い要素の豊かな奴だ。元気くん達に頼んでヘビやトカゲを集めてもらった。
 ムサシの悲鳴が聞こえる。あんなものを恐がれるなんて、感情豊かというのだろうかもな。俺もリョウも可愛げがない。
 と思っていたら、リョウも高所恐怖症らしい。空を制覇するゲッター1のパイロットが高所恐怖症なんて、あまりにも気の毒で掛ける言葉がない。ムサシは親切というか、「空を飛べないオイラのゲッター3と交換しようか?」なんて聞いていたけど、それこそ傷口に塩をすり込むようなものだ。皮肉屋の俺ではなく、素直なムサシの言葉だから余計にグサっとくる。さすがのリョウもショックを隠しようもない。相手を思いやる言葉が、必ずしも相手を思いやるとは限らない、という良い例だ。
 落ち込んでいるリョウは正直うっとおしかったが、ムサシと違ってアイツは自分自身で克服しようとしているようだ。朝から姿が見えない。
 あとで。
 迎えに行ってやろう。





 7月○○日



 [ ムサシ ]


 今日は麓の町で花火大会だ!
 夜店もいっぱい出る。たこやき、やきそば、リンゴ飴。カキ氷、やきとり、わたあめ・・・・・・それに何といってもミチルさんのゆかた姿が見られるぞ!!
 夜空に花咲く大輪の花火。
 「きれいね----」
 「いいえ、ミチルさんの美しさの前では、この華やかな花火も色無しですよ。」
 「いやァね、ムサシさん。」
 はにかむミチルさん。
 「本当ですよ。オイラ、花火なんかよりミチルさんのほうが、ずっとずっと綺麗だと思います!」
 「・・・・・・・・・・ありがとう、ムサシくん。うれしいわ・・・・・・」
 ----------くぅっ!!-------
 よおし、今夜は絶対ミチルさんと2人っきりになるぞぅ!途中でなんとかしてリョウやハヤトを撒(ま)かなきゃな。
  神様、オイラに力を貸してください!!!



 [  リョウ  ]


 今夜は花火大会だ。元気ちゃんが楽しみにしている。ミチルさんもゆかたを着るのだと張り切っている。きっと似合うだろう。でもゆかたではバイクの運転は無理だ。俺のサイドカーに乗るとして、ムサシと元気ちゃんはどうしよう。元気ちゃんなら一緒にサイドカーに乗れるけど、問題はムサシだ。ムサシはバイクはおろか、自転車にも乗れない。
 ハヤトに頼みたかったが、アイツは花火大会なんか興味ないという。つまらないやつだな。日々激しい戦闘の中、ふと訪れる季節折々の風物詩。それを楽しむことによって心にゆとりが生まれ、新たな戦いへの活力ともなるのに。
 ハヤトを見ているといつも歯がゆく思う。
 アイツは運動能力が優れているだけでなく、知能もずば抜けている。学校の試験ではいつも俺と学年トップを争っている。俺は自分でコツコツ努力しているほうだと思う。ハヤトはほとんど勉強していない。俺が見てないだけかもしれないが。コツコツ努力する者を秀才型というなら、ハヤトは天才型か?だが、天才というものは努力して得ない分、固執もしないらしい。
 もったいない。
 何につけてもあり余るほどの才能を持ちながら、すべてをご破算にする、あの性格!!



 [  ハヤト ]


 くしゃみが出る。誰か、うわさしているな。(たぶん・・・・・奴か?)
 今夜はふもとの町で花火大会があるそうだ。いつもに増してムサシがかしましい。
 リョウが俺にも来るよう言ってきたが断った。ムサシの足がない、とのことだが、良い機会だ。練習させるといい。今夜なら、特に必死になって練習するだろう。万一事故っても、ムサシならかすり傷だ。ミチルさんと元気くんはリョウのバイクに乗れるだろう。ムサシがモタモタしているうちに花火が終わってしまうかもしれないが。
 俺は人ごみは苦手だし、花火を見たいとも思わないからな。確かに綺麗だろうとは思うが。
 敷島博士から研究室にくるよう連絡を受けている。花火よりも面白いものが見られそうだ。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 花火どころじゃない。
 だいぶ縮小された模型だったが、示された計算によると、たしかに防御システムという形ではある。(「攻撃は最大の防御」という意味では。)
 あれほどの破壊力となると、その砲台とかを設置すること自体難しい。砲撃の衝撃で、砲台さえ崩れてしまうだろう。今の研究所の基盤等ではとても無理だ。もっと要塞化した堅固なものでないと、これほどの迎撃システムは設置できない。計算を見ただけでもめまいがした。月だって壊せそうだ。俺の感想を聞いた敷島博士は肩を落として、
 「ふーむ、残念じゃ。これを発動させるときの作戦名まで考えたんじゃがのぅ・・・・・・」
 心底、無念そうにつぶやいた。
 「なんという作戦名なのですか?(本気で造るつもりだったのか・・・・)」

 「 作戦名はの、 『 孔雀 』じゃよ。全発射台から一斉に発射される集中砲火が、羽を広げた孔雀のように美しい。まさしく芸術といえるだろう。ひっひっひ。」

 いつか・・・・・・やりかねないな、この人は。だが、こんな凄まじい武器が必要な戦いなんて、俺は御免こうむるゼ。



 8月○日



 [ ムサシ ]


 この前の花火大会は、結局オイラだけ終了までに会場にたどり着けなかった。あんなに頑張ってバイクの練習をしたのに。悔しくって、あれから毎日練習したおかげで、なんとか乗れるようになったけど。
 それよりも今日は、ミチルさん達とキャンプだ!!
 元気ちゃんが、夏休みの宿題の作文に書くことがない!ていうから、俺たちでキャンプしようってことになったんだ。もちろん、いつ出動があるかわかんないから、あまり遠くへは行けないけど。わりと近くに川の流れているいい所があるらしい。
 よおし、今度こそミチルさんのハートをがっちり(死語か?)つかむぞォ!!



 [  リョウ  ]


 元気ちゃんが、「夏休みに何処へも行けなかった。」とがっかりしているので、みんなでキャンプすることにした。小学生の頃って、少しの冒険でもワクワクしたものだ。今までは達人さんが、忙しい博士の代わりに元気ちゃんをいろいろな所へ連れて行ってたらしいけど、もう達人さんはいない。せめて俺たちで楽しい思い出をつくってやろう。
 ハヤトは多分行かないだろうな、と思ってたけど、(実際そうだったが。)元気ちゃんが淋しそうな顔をするものだから、しぶしぶ頷いた。やはりキャンプは人数が多い方が楽しい。場所を何処にするか悩んだが、ハヤトがいい所を知っているという。このあたりに詳しいらしい。よくエスケープしてるけど、こんな所にまで来てるのかな。
 テントがうまく張れるか心配だったが、用意しているハヤトは手馴れたものだ。なんでこんなことまで上手いんだ?ジト目で見ているのに気付いたのか、
 「何度か登山でキャンプしたことがある。」
 「?ひとりでか?」
 「いや、知り合いの大学生とだ。」
 ・・・・・・・・・・・ひとりで行っている、と言われるよりも驚いた。こいつが他人と仲良くキャンプ?わざわざ?
 俺が胡散臭く思ったのがわかったのか、
 「姉貴の知り合いでな。断れなかったんだ。」
 と、ぶっきら棒に言う。唯我独尊のハヤトが断れないなんて。よほど姉さんを大事にしているようだ。もちろん、その知り合いという人も、いい人間というか、ハヤトが認めたやつなんだろう。少し悔しい気がする。なんとなくな。
 
 夕食はバーベキューにすることにした。ムサシが「オイラにまかせろ!」と張り切っている。一抹の不安はあるが、食べることに関してならムサシの得意だろう。俺とハヤトは元気ちゃんを連れて魚とりに行くことになった。少しはムサシを、ミチルさんと2人きりにしてやろう。バイクの特訓を頑張ったご褒美だ。
 途中途中に生えている山草や木の実の名前を元気ちゃんが聞いてくる。ハヤトは名前ばかりでなく、薬草で効能はこうだとか、それは天ぷらにして食べるとうまいとか、そんなことまで知っている。こいつ、植物に興味を持っていたのか?不思議に思って尋ねると、
 「子供の頃、よく山菜取りをやったからな。姉さんや母さんに教えてもらったり、自分で図鑑で調べたりした。」
 くわしく聞きたいと思ったけれど、ひどく懐かしそうな眼をしていたので止めた。きっとハヤトにとって、何ものにも換えられない大切な思い出なんだろう。今はまだ、ハヤトの心にズケズケと入っていける付き合いじゃない。いつか、そう、いつか、ハヤトが自分から話してくれる日が来るといい。
 川に着くと、澄んだ水の中に魚影が見える。
 「ハヤト、何匹捕れるか競争しないか?」
 「俺とお前が捕る競争をしたら、喰い切れないだろう。先に十匹捕ったほうが勝ち、というほうがいい。」
 確かに、と思ったが、そうするとハヤトも俺のことは、一応認めてくれているんだな。嬉しくなる。
 「よぉし、わかった。どちらが先に十匹捕れるか、競争だ!」



 [ ハヤト ]


 リョウ達がキャンプをすると言うので、別荘に行くときの近道で見つけた谷間に案内する。魚の住む川が流れていて、キャンプにはうってつけだ。元気くんはキャンプが始めてらしく喜んでいる。
 バーベキューの準備はムサシにまかせて、俺たちは魚捕りに向かった。フッ、俺の勝ちだな、リョウ。
 戻ってから、ムサシに準備をまかせたことを後悔した。
 「男の料理だ!」と自慢げに見せたけど、あんなに大きくニンジンやジャガイモ、カボチャなんかを切ったら、中に火が通るまでに焦げてしまう。もう少し薄く切るとか下茹でするとか。ミチルさんを見ると困ったように笑っている。きっとムサシの勢いに、口を挟めなかったのだろう。
 「オイラにまかせてください、ミチルさん。いつも作ってもらうお礼に、今日はオイラが男の料理をプレゼントします!!」とかなんとか。大真面目で言い切る姿が目に浮かぶ。
 まあ、いい。気取った食事会ではなし、生焼きでもそれなりに楽しい思い出になるだろう。それに、元気くんも作文を書くには失敗談のほうが書きやすいし面白いだろう。
 ということで、俺は自分の食い物は確保しようと、さっき捕ってきた魚を料理し始めた。戻って来る途中でいくつか香草を見つけたのでホイル焼きにする。元気くんが興味深そうに見ていたので、魚のおろしかたを教えたり、串刺しのやり方を説明していたら、またリョウが信じられないものを見るかのように俺を見る。
 おい、リョウ。おまえの持ってる俺のイメージってどんなだ?



 [  リョウ  ]


 バーベキューは最悪だった。野菜が生焼けだったからもう一度焼きなおして、今度は肉が焦げすぎで。結局、俺とハヤトと元気ちゃんが捕った21匹の魚がメインになった。バーベキューで失敗するなんてことあるか?
 ハヤトは魚を塩焼きだけではなく、香草まで入れて調理した。ハヤトがこれほど家庭的(?)だとは夢にも思わなかった。ハヤトの一面を知っただけでも、今回のキャンプは実のあるものだったな。
 9月になれば体育祭がある。10月には文化祭だ。最後の高校生活を飾る重要な行事だ。ハヤトはいつもサボっているが、今年は是非とも参加させるぞ!!



 [ ムサシ ]
 あ-------!!!
 予定ではリョウ達をさっさと寝かせて、ミチルさんと2人っきりで夜空の星を眺め、あわよくばチューを!とのはずだったのに、オイラが一番に寝てしまったなんて!!
 バカ、バカ! オイラのバカァ!!!




           戦士たちの  つかの間の   休息

           おやすみなさい。





          ------------*-------------*------------*--------



  「朱里の里」の朱里様より 8100番リクエスト

   お題は     「  TV版で
 青春している ゲッターチーム 」


 TV版から入った 私としましては、「なんて素敵なお題でしょう。」とルンルンだったんです。
 しかし、30年以上経っているんですよね〜〜〜。青春の記憶なんて忘却の彼方だわ〜〜。(その前に青春があったのか、かるら君)
 高校生って、何してたっけ??


 申し訳ありません、朱里様。相変わらずこんなものになってしまいました。
 でも、 @ ということは、いずれ続きがあるかも、ということですよね。(誰が書くんだ?)
 ええ、ネタさえ頂ければ・・・・・・・・・・・

                どうしようもない かるら です。

             (2006.9.29)